桂馬かまぼこ商店様、この度は創業100周年、まことにおめでとうございます。
桂馬様には子どもの時から憧れに似た気持ちを抱いていた私、
人生の色々な場面で御縁を頂いている事に感謝致しております。
子ども時分、尾道出身の母が里に帰ると必ず買ってきた桂馬、
私は柿天が特に好きで早速パックリ食べようとするといつも、
「そんなに慌てて食べるもんじゃないよ。
桂馬は落ち着いて一口ずつ味わって食べなくては」
と諌められたものです。
当時尾道の親戚の法事には必ず桂馬のかまぼこ詰め合わせが付けてあり、
その時は割と大っぴらにパクパクと頂く事を許されて、
子ども心にとても嬉しかったものです。
大きくなったら思いっきり食べてみたい!
そんな私が「桂馬を一箱見ず知らずの女の子の私にくれた」
今は亡き陶芸家秋元文雄と結婚する事になったのは、
全く不思議な桂馬が取り持つ縁でした。
その朝彼は当時付き合っていた女の子の家に結婚の許しを貰いに行く予定で、
手土産に桂馬を三箱注文したそうです。
出る直前女の子から電話があり、
「窯を持って一年目のあなたとではまだやっていけないと思う。今日は来ないで」
仕方がないので知り合いの店に持っていき、皆で食べていたところに私が現れた、という事でした。
桂馬を頂いて三年後、秋元の個展に初めて行き再会、
何故か結婚する事になってしまったのでした。
二十年あまりの結婚生活は四年前彼の突然の死によって終わりました。
デリケートで寂しがり屋だった彼の為に私達はすぐに遺作展を計画、
個展にいつも来て下さった方々が思い出を語りながら
作品を家に連れ帰って下さいました。
文くん、良かったね。もう寂しくないね…。
最終日、不思議な奇跡が起こりました。
そろそろ会場を片付けようと動き始めたところに中年の男性の方が来られ、
入口に置いていた大きなオブジェを指差し、
「これをお願いします。店に届けて頂けますか?」
と言われた。
「あ、はい、分かりました。どちらのお店ですか?」
と聞く私に、
「かまぼこの桂馬です」
……。
驚いて絶句してしまいました。
こんな事ってあるんですね。
陶芸家秋元文雄との縁は確かに桂馬様により始まり、
桂馬様により終わったと思えて仕方ありません。
一年後、ピアノを弾く私はバイオリン(田中郁子)、
しの笛(加藤千政)と共に一周忌のコンサートを
彼の友人だった妙泉寺でさせて頂きました。
コンサートの前に竹原の酒、竹鶴と共に桂馬のかまぼこを頂く、
という楽しい企画を思いつき、竹鶴様、桂馬様共に快く協力して頂いた事は
今思い返してもありがたくて感謝の気持ちで胸がいっぱいになります。
彼の思い出を語りながら皆が心暖まる一日を過ごす事が出来ました。
人々の色々な思い出の中に桂馬はあります。
大変なお仕事と思いますが、
これからもずっとずっと美味しいかまぼこを作り続けて下さいね。
深い感謝と共に桂馬様のますますの御発展をお祈り致しております。
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